エロ本の乱
小学生の頃なんですが、
ある日同じクラスの城間くんが
「エロ本がいつも捨てられてる場所がある」
という超ド級の情報を持ってきまして、
軽くクラスがパニックになったんですが
聞いてみるとそこがなんと
市役所
だと言うんです。
公務員の不祥事というわけではなく、
当時市役所に古本をまとめて持っていくと
図書券がもらえるキャンペーンをやってまして、
その古本がノーチェックでごみ捨て場に放置されており、
ごみ捨て場に鍵がなく一般人でも入れるという
複数の要素が重なって生まれた奇跡だったんですね。
同世代の方は共感してくれるとおもうんですが
ネットが普及してない頃の
落ちてるエロ本の競争率は半端じゃないんですよ。
良いスポットを見つけたとしても、
とめどない性欲にかられた中高生にすぐ嗅ぎ付けられてしまいますからね。
まさなりくんなんか、
せっかく見つけたエロ本を高校生に脅し取られ、
照れ隠しに所持金までカツアゲされるという
凶悪コンボを食らって泣いてましたから。
そこで早速クラスの中でも抜きん出た性欲を持つ男子数名で
エロ本奪取計画が立てられ、
計画は大胆にも日曜の日中に実行に移されました。
僕は家から市役所まで2キロくらいの
超急勾配の坂をチャリを手押しで登りながら向かいましたが、
身体中に力がみなぎり全く疲れを感じませんでした。
ただ、計画と言っても小学生の浅知恵ですので
自転車で行ってカゴに積めるだけエロ本をパクりまくる
という至極単純なものでしたが、
そのシンプルさが功を奏したのか、
誰にも見咎められることなく計画は大成功をおさめ、
全員がチャリのカゴをエロ本でパンパンにして家路につきました。
もう一刻も早く家に帰りたくて長い坂道をむちゃくちゃに飛ばしていたんですが、
好事魔多しとはよく言ったもので、
次の瞬間
自転車のブレーキがぶっ壊れました
ただ、位置エネルギーが膨大過ぎてすでに
足ゴリゴリでは止まらないどころか
巻き込まれて足首骨折するくらいのスピードが出ていましたので、
もはや道が平らになるまで走り続ける覚悟を決めていたんですが、
結局、
糸数K子議員の等身大立て看板に直撃して止まりました。
このポーズ何なの?
糸数議員のアッパーカットをカウンターぎみに食らった僕はふっ飛んで地面に叩きつけられ、
あまりの痛さに立ち上がれずに道端でうつぶせになって回復を図っていたんですが、
悪いことは続くもので
巡回中のパトカーに見つかってしまいました。
すぐさま2名の警察官が下りてきて
「どうした!!大丈夫か!!」
と声をかけてきて、大分心配してくれているようでしたが、
当時は
「エロ本が見つかったら逮捕される!」
という誤解だけが頭にあったので
速攻で立ち上がり、
「大丈夫です!ちょっと転んじゃってえへへ」
とわんぱくボーイを演出してなんとか乗り切り
フラフラになりながら無事家にたどり着きました。
ただ、そこまでして手に入れたエロ本でしたが
よくよく内容を見てみると大半が
インセクト系
だったんですよね。
参考文献「遊戯王」高橋和希著
抜けるかボケ。トラウマになるわ
ページが切り取られた形跡があったので
おそらく前の持ち主が文字通り、
抜けるページのみを抜いたと考えられます。
傷心の中、今度こそまともなエロ本をゲットすべく
市役所へのリベンジの機会を伺っていたんですが
僕たちのエロ本大作戦の噂が予想以上に広まってしまい、
便乗したよそのクラスのばかちんが
市役所のごみ捨て場からはじめの一歩全巻をパクって職員に見つかる
という事件をきっかけについに市役所側が扉に鍵を取り付け、
僕たちの青春に終止符が打たれました。
今は紙媒体自体がだいぶ廃れていますし、
ネットでいくらでも高画質の動画が見られますが、
僕はたまに無性にエロ本で抜きたくなる時があります。
いつかきっと、切り取られたあのページに出会えると信じて———